化学の力でごみを資源にする
プラスチックごみ(廃プラスチック)の処理方法として、近年「ケミカルリサイクル」に注目が集まっています。ケミカルリサイクルとは、謂わば化学によるプラスチックの再利用法です。
具体的には廃プラスチックを分子レベルまで分解することで、樹脂を含め様々な化学物質として再利用するものです。
それらは還元剤と称されており、アンモニアや水素、酢酸やメタノールなどの工業用物質に生まれ変わっています。代表的なものでは、製鉄所で使われる「コークス」が挙げられます。
本来のコークスは石炭が原料となりますが、廃プラスチックをその代用とすることが可能です。
それによりコスト削減にもなり、ゴミ削減と併せて一石二鳥の効果があると言えます。
また、コークスの製造過程で炭化水素油が生成され、プラスチックの原料にもなるのも特徴です。さらに、コークス炉から出るガスは発電に利用されており、廃プラスチックのエネルギー利用を促進させます。
加えて、廃プラスチックのコークス利用においては、プラスチック中の水素が鉄鉱石中の酸素と結合して水になります。
これは、二酸化炭素の発生量の削減効果にもなっています。事実、コークス炉におけるケミカルリサイクルは、サーマルリサイクルよりも二酸化炭素削減効果が格段に高いことが証明済みです。
ケミカルリサイクルは、ゴミを化石資源の代替材料に変えるという究極のリサイクル技術だと言えます。この技術はEUを中心に広まりつつあり、2018年には「循環プラスチック同盟」が発足されています。
当同盟は、2025年までに域内で1000万トンのリサイクルプラスチックを採用することを宣言しています。特に宣言の中で中心に置かれるのが、ケミカルリサイクルに関する研究開発及び投資です。
それを受けて、欧州化学工業連盟もケミカルリサイクルがプラスチックリサイクルの要という見解を示しました。一方、日本国内ではマテリアルリサイクルが優先されており、ケミカルリサイクルに向けた制度転換が求められます。