海洋ごみを集めてアート作品を作る
インフラが整備されていない発展途上国では、プラスチックごみを処理するシステムが確立しておらず、ごみがそのまま川に投棄されます。
川に捨てられたプラスチックは腐敗することなく海に流れ込み、漂着物として他の海岸に流れ着くのです。こうした漂着ごみで埋め尽くされた海岸は多く、毎年多数のボランティアが回収に精を出していますが、その量が膨大で、なかなか綺麗なビーチに戻りません。
海岸に漂着するのは、プラスチックごみだけでなく、ペットボトルやそのキャップをはじめ、プラスチック製のルアーやロープといった漁具も多いと言えるでしょう。
このように細菌が分解できない人工物は、様々な彩りで、海岸にはカラフルな欠片がそこら中に散らばっているのです。
こうした海洋ごみを集め、アート作品を作って販売している芸術家がいます。彼らは単に作品の材料として海洋ごみを利用しているのではなく、海洋ごみの問題を社会に訴える手段として、海洋ごみを敢えて使っているのです。
したがって、作品の多くは、海洋生物や海の景色をモチーフとしています。その出来はどれも素晴らしく、指摘されなければごみを集めて作った作品とは思えません。
ごみからできたアート作品とはいえ、その値段は数万円に及び、高価で売れています。オンラインで販売すると間もなく買い手が付き、売れ残ることはほとんどありません。
作品には、海洋ごみの問題や作者の思いなどを添えることで共感を呼びやすく、アートの素人であっても、作者の自然に対する愛情に感銘して購入する人もいます。また、釣り人や漁業関係者など、海洋ごみ投棄に加担した後ろめたさを持つ人が、罪滅ぼしのために買うこともあります。
海洋ごみを集めてアート作品を作れば高値で売れることから、芸術家がゴミ拾いのモチベーションを上げていることは否定できません。環境美化という目的だけでは、膨大な量の漂着ごみを拾い続けるのは大変なのです。
お金になるアート作品の材料を探す目的なら、ごみ拾いも苦にならないという訳です。