様々なごみで汚染されたガンジス川が生活用水として使われている理由
インドのガンジス川は流域に居住する人の生活に深く関わっている川として知られています。特にガンジス川で沐浴をする人のすぐ近くで飲み水を汲んだり、遺体が流れている脇で衣類を洗濯する人の姿はテレビニュースなどで広く伝わっています。
ガンジス川は近隣住民が捨てる大量のごみで汚染され、その水質は非常に悪くなっているのが実状です。その事実は広く知られていますが、それでもガンジス川の水を生活用水に使う人は後を絶ちません。これはガンジス川が聖地と崇められているのが大きな理由です。
インドに住む人の多くはヒンズー教徒ですが、ヒンズー教ではガンジス川は神様が変化したものとされています。
ガンジス川の水を使うのは神様の聖なる力を授かる神聖な行いという認識なので、ごみで汚染されていることを承知のうえで生活用水にしているのです。
また、ごみと一緒に遺体を流すのは輪廻の因果から解き放つのが目的です。人の魂は永遠に生まれ変わりを繰り返し、未来永劫苦しみ続けるとされています。
遺体をガンジス川に流すのは神様の力で輪廻から解放されるためですが、同時に不浄の物を清める意味もあります。死は不浄の象徴であり、聖地であるガンジス川に死そのものである遺体を流すことで清めを行っているのです。
ごみを捨てるのも不浄なごみを流して洗い清める意味があるのです。インドはごみ処理の設備が充実していないのでガンジス川に捨てる方が手っ取り早いという、現実的な理由もあります。
インフラ整備が充実していないのはインドが抱える問題の一つですが、特にガンジス川の汚染された水を生活用水に使うのは深刻な事態と言えるでしょう。
インドは長い歴史の中で度々感染症が流行しましたが、その多くがガンジス川流域で起こっています。これは古くからガンジス川が大量のごみで汚染されていたことの証でもありますが、宗教上の理由から生活用水に使うのを禁止することはできません。
水質を改善させる設備も高額なので導入が難しく、問題の解決は難しいと言えるでしょう。